生理前の不調(PMSとPMDD)について

2022/12/01

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PMSPMDD

月経前になるとイライラしたり、不安、集中力の低下、また腹痛や頭痛、むくみ、お腹の張りなどの症状がありませんか?毎回このような精神的、身体的症状を繰り返すときは月経前緊張症候群(PMS, Premenstrual Syndrome)の可能性があります。

PMSとは月経前3日から10日の間に続く精神的、身体的な症状で、月経がはじまるとともに症状が治まったり、なくなったりするものをいいます。PMSかどうかは症状が月経前に限られるか、毎月繰り返すのか(3周期以上)、日常生活に支障が出るかが判断のポイントになります。

イライラや気分の落ち込み、怒りっぽくなるなどの精神症状が強く、日常生活に支障が出るときは月経前不快気分障害(PMDD, Premenstrual Dysphoric Disorder)かもしれません。

 

PMSの原因ははっきりとわかっていませんが、女性ホルモンの変動が関わっていると考えられています。排卵から月経までの間にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌されます。月経前になるとこれらのホルモンが急激に低下し、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことが、PMSの原因と考えられています。

 

症状は、精神症状ではイライラや情緒不安定、抑うつ気分、不安、睡眠障害、のぼせ、めまいなどがあり、身体症状はお腹の張り、むくみ、だるさ、頭痛、乳房の張りなどがあります。精神症状が強く感情のコントロールができなくなって対人関係が悪くなり、仕事にも影響を及ぼすことがありこのような重症のPMSは月経前気分不快障害(PMDD)とよばれ心療内科の受診が勧められます。

 


治療はまず日記に症状の起こる日や症状を記録し、リズムを知ってセルフケアを行って気分転換、リラックスすることを心がけることをお勧めします(アロマテラピー、マッサージなど)。カルシウムやマグネシウムの摂取も効果的といわれます。

 


薬物療法

 ● 低用量ピル、低用量エストロゲン・プロゲスチン療法で排卵を抑え、情勢ホルモンの変動をなくすことで症状を抑えます。

 ●鎮痛剤、むくみに対して利尿剤、精神症状に対しては精神安定剤、選択的セロトニン再取り込み阻害薬物療法などを行います。

 ●漢方療法;当帰芍薬散、桂枝茯苓丸などを用います。

PMDD

PMSの症状のうちイライラ、気分の落ち込み、怒りっぽくなる等の精神症状が強く出るなら月経前不快気分障害(PMDD, Premenstrual Dysphoric Disorder)が疑われます。

 

月経前1週間での症状について以下の自己診断リストでチェックしてみてください。

 


リスト1(4項目)

       突然悲しくなる、または涙もろくなる、または拒絶に対する敏感さが高まる

       怒りっぽくなる、または対人関係の摩擦が増える

       うつ気分、落ち込みが強い、絶望感、自己批判的になってしまう

       不安感、緊張を感じる、“高ぶっている”とか“いらだっている”という感覚がある

 

リスト27項目)

       日常生活(仕事、学校、友人、趣味)において興味が薄れる

       集中力が薄れている

       疲れやすい、気力がわかない

       過食、または特定の食べ物を食べ続ける

       過眠、または不眠

       圧倒される、または制御不能という感じ

       身体症状:乳房痛または緊満感、関節痛または筋肉痛、“膨らんでいる”感覚、体重増加

 

リスト1・リスト2においてそれぞれ少なくとも1つ以上当てはまる症状がある

リスト1・リスト2のチェック項目数を足すと5項目以上になる

☐直近の1年間、ほとんどの月経周期において、月経前に少なくとも5つの症状があり、月経が始まると症状が軽快するかまたは消失する

☐症状があるとき日常の活動が障害される

☐うつ病やパニック障害によるものではないと考えられる

 

上記の5つの質問にすべて当てはまる場合、PMDDの可能性があります、医師に相談することをお勧めします。

PMDDでは抗うつ剤や経口避妊薬などを用いることが多いようです。生活習慣の見直し等のセルフケアも大切です。

 

伊集院産婦人科 塩川 宏信


(参考資料)        産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2020:日本産科婦人科学会

                             大塚製薬ホームページ